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院長コラム:耳鳴り(4)

耳鳴り(4)

耳鳴りについて3回お届けしました。耳鳴りの多くは耳の病気で脳の病気は比較的少ないという事を説明してまいりました。今回は、その少ない脳の病気による耳鳴りについてご紹介いたします。

患者さんは、52歳の男性でした。右側の耳の上あたりで心臓の鼓動に一致するような「ズン・ズン・ズン」という耳鳴りを一日中感じていた。それ以外に症状はないために放置していたようです。ある日突然右側の強い頭痛があり、普段は正常な血圧が170/80mmHgと高いために受診となりました。その際の頭部CT(写真1)が右側の写真です。黄色の矢印に示す部分に脳出血をおこしています。通常の脳出血は高血圧性脳出血といって高血圧によって血管が傷むことによっておこる脳出血です。この患者さんはもともと高血圧もありませんし、通常の脳出血ではおこらないような場所に出血をおこしていましたので、違う原因が考えられました。

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そこで脳血管撮影を行いました。発症時の脳血管撮影が左下の写真(写真2)です。通常は動脈→毛細血管→静脈の順番で血管が描出されますが、この患者さんでは、動脈から毛細血管を経由せずに直接静脈に血液が流れ込む形になります。ですから一般の血液の流れより、毛細血管で圧力が徐々に減っていく部分がないために、直接静脈側に圧力がかかりやすくなり、脳内出血をきたしやすい状態になります。

この患者さんは、既に脳出血をおこしていますので、血管内手術といってカテーテルを使って動脈と静脈が直接繋がっている部分を閉鎖する手術を行います。閉鎖後の脳血管撮影が真ん中の写真(写真3)です。黄色の矢印で示した部分の血管が、真ん中の写真ではなくなっているのがわかります。一番右側の写真(写真4)が動脈と静脈が直接繋がった部分をコイルというもので埋めてしまったレントゲンです。矢印の部分が全部コイルで埋めた状態になって、この状態で治療完了となります。耳鳴りと言えども稀にはこのような病態もあり、注意が必要です。

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