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院長コラム:てんかんについて(4)

てんかんについて(4)

ヨーロッパの報告によりますと、てんかん患者さんの交通事故は全ての交通事故の0.25%であり、てんかん患者さんは人口の約1%存在することから考えても決して事故発生率が高いとは言えません。また、てんかん患者さんがおこした交通事故のうち、てんかん発作による交通事故は11%と決して高くありません。そのため、以前であれば「てんかん患者=運転免許は持てない」となっていましたが、2002年の道路交通法改正により、一定の条件を満たした場合にてんかん患者さんにも普通運転免許が与えられるようになりました。

院長コラム:てんかんについて(4)

上のグラフに示しますようにてんかん患者さんでも抗てんかん薬を内服することによって、6割以上の患者さんの発作が消失しています。このような患者さんは、最終発作から2年以上経過すれば免許取得が可能となります。欧米では最終発作から1年と定められている国が多く、日本の基準は諸外国よりも厳しく定められています。2年間無発作で経過して運転を再開したてんかん患者の交通事故発生率は、一般の方と同等であることも示されています。

大型免許や二種免許に関しては、抗てんかん薬の服薬がない状態で過去5年間発作がないという厳しい条件が適用されていて、実質てんかん患者さんは職業としての運転は日本では認められていません。

今回、栃木県鹿沼市でおこったクレーン車による交通事故は、大型免許でありますのでてんかん患者さんは取得できないケースです。おそらく、てんかん患者であることを隠して免許を取得したものと思われます。このようにてんかん患者であることを隠して免許を取得し、交通事故をおこした場合には、刑事・民事での責任が加重されるものと考えられます。一方、てんかんであることを申告した上で免許を取得し、不幸にも運転中に交通事故をおこした場合には責任が加重されることはありません。

一定の条件を満たせば、てんかん患者さんでも運転免許を与えられるのは全世界的に共通した認識です。当院でも、てんかん患者さんで一般の人々と同じように車の運転をされている患者さんもいらっしゃいます。車を運転されるてんかん患者さんには、規則正しい生活・抗てんかん薬の定期的な内服・受診や血中濃度の測定だけでなく、何かおかしいと思ったら速やかに運転の中止をするなどして細心の注意を払って運転していただきますよう指導させていただいています。